問題演習

2017.03.29更新

問題.次の事例を読んで,設問に答えよ。

 

 横須賀市で細々と仕事を続けているT弁護士は,先日,なけなしの貯金をはたいて,新車の自動車を購入した。自動車は,海外のメーカーが製作したものだったので,海外の工場で製作された自動車が船便で日本に届き,一定期間倉庫に保管された後,客からの注文が入ると車両登録などの作業を行った上で,客に納車されることになっていた。

 

 T弁護士が新車を注文してから2週間ほど経ったある週の月曜日,自動車販売店の店員から連絡が入った。内容は,「T弁護士さんの新車が販売店に届きましたので,いつでも取りに来ていただいて構いません。」というものだった。そこで,T弁護士は,同じ週の金曜日に自動車販売店を訪れ,新車を受け取ることにして,その内容を店員に伝えたところ,店員もこれを了解した。

 

 納車当日は,関東地方に強風が吹き荒れた日だった。T弁護士が自動車販売店に到着したところ,店の駐車場に真新しい車が駐車されているのを見つけた。店員は,「これがお客様のお車ですよ。」とT弁護士に伝えた。

 

 T弁護士が,店内で自動車保険の手続きなどを行っていると,他の店員がT弁護士に対し,おそるおそる次の事実を伝えた。「隣に止めてあった車のドアがお客様の車に接触してしまったようでして・・・現場をご確認いただけますか。」

 

 T弁護士は,大した話ではないだろうと思い,お店の外に出ると,納車寸前の新車に隣の車のドアが刺さっている状態であった。聞けば,春一番の風にあおられて勢いがついていたらしいということが分かった。T弁護士は,正直テンションガン萎えであったが,自走するのに問題はないし,事務所での打合せの時間が迫っていたことから,すでに新車と呼んでいいのかよくわからない新車を受け取って,帰路についた。

 

 2週間ほどしてから同車を修理に出したところ,相手方保険会社が気をまわしすぎたせいで,代車としてメルセデスベンツが用意された。扱いづらくてしょうがないので友人に話すと,「買った車ってベンツだったっけ。」と聞かれた。そこで,T弁護士は,事の一部始終を説明することにした。

 

 すると,友人は,「何でそのまま乗って帰ってきたんだ。新車を買いに行ったんだから,傷物の車を受け取るいわれはない。きちんとディーラーの担当者に対し,『私が欲しいのは新車なので,再度新車を手配してください。』と要求すべきだ。」と言ってきた。

 

 

設問1.T弁護士は,ディーラーに対し,再度新車を手配するように請求することができるか。

 

設問2.今回の事故を防ぐためには,どのような方法を取っておくべきであったと考えるか。

 

設問3.新車に隣の車のドアが刺さっている状態を目撃したときのT弁護士の心情について,300字以内で説明せよ。

 

 

投稿者: アダジオ法律事務所

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