「性的暴行」という摩訶不思議
2016.08.30更新
こんにちは。
弁護士の角井です。
思えば,ポケモンGOに現を抜かす記事を書いてから早1月。
みなさまいかがお過ごしだったでしょうか。
ちなみに,ポケモンをやる頻度は明らかに減ってきております。
まぁ,もう114匹集めたしね。カブト出ないかなぁ。
こんな間の抜けた始まりですが,最近はがっつりとした刑事事件の報道があって驚いております。
某芸能人による強姦致傷被疑事件(本人が認めているとは言ってもまだ疑いの段階ですからね)については,様々な報道がなされています。
あの方は,お母様が非常にパワフルだったこともあって,ついつい事件以外の話が盛り上がってしまいますが,法律家としては,やはり犯罪自体に注目したいものです。
そもそも強姦罪とは,「女子を姦淫」することによって成立する犯罪です。「姦淫」とは,男性器を女性器に挿入することですから,強姦罪に問われるのは男性だけということになりますね。女性が男性を姦淫する行為は,強制わいせつ罪になります。
本件は,強姦致傷罪ということですので,強姦の際に女性にけがを負わせてしまったということになります。両罪の違いとしては,法定刑の違い(強姦罪は,3年以上の有期懲役,強姦致傷罪は,無期または5年以上の有期懲役)と親告罪か非親告罪かといったところでしょうか。
親告罪とは,被疑者を起訴する際に被害者の告訴が必要な犯罪のことであり,強姦罪などの性犯罪のほかには名誉毀損罪などが有名です。強姦罪の場合は,裁判で被害者の名誉が害される恐れがあるため,被害者の告訴を必要とする趣旨です。ただし,強姦致傷罪は,犯罪の重大性が優越することから,告訴を不要とする非親告罪とされています。
また,強姦致傷罪は,無期懲役刑が法定刑になるため,裁判員裁判対象事件にもなります。
こうやって書けば書くほど大変重大な犯罪ですが,本件が強姦致傷罪で起訴されるかどうかについては,やや疑問なところがあります。
つまり,強姦罪と強姦致傷罪の法定刑は大きく異なるため,けがの程度があまりに軽微な場合に強姦致傷罪を適用するという決定に対しては,適切な刑罰を科すという意味から考えると異議を唱えるべきではないかと思うわけです。
本件被害者の方が受けたけがの程度は定かではありませんが,仮に全治1週間の擦り傷程度だった場合には,強姦致傷罪ではなく強姦罪として起訴すべき場合もあるように思われます。
報道番組などでは弁護士による量刑予想が多く伝えられていますが,この「認定落ち」に関する報道が見当たらなかったので,補足的に解説してみました。
ちなみに,本人は前橋警察署に留置されているようですが,一般面会時間は15分です。
一部報道では,母親の面会について「1時間ほど面会したとみられる。」という記述がありましたが,そんなことはありえませんので悪しからず。
なお,弁護士は何時間でも接見できます。なぜかって,接見交通権は憲法上の権利だからです。そこんとこよろしく。
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