永い眠りから醒めて
こんにちは。
弁護士の角井でございます。
いやぁ,読者の方の中には心配に思ってる方もいらっしゃったのではないでしょうか。
角井は死んだんじゃないか,と。
そう。すべては9月に遡るのです。
その日は,当番弁護士の担当日でした。
Q1.当番弁護士って何ですか?
A1.当番弁護士とは,各単位弁護士会(横須賀でいえば横浜弁護士会)ごとに当番の弁護士を置いて,被疑者や家族・知人から弁護士会に接見依頼があれば,当番の弁護士が無料で接見に応じる制度です。
朝,事務所に行くと早速弁護士会からの電話あり。内容を聞くと,被疑者のお父さんからの依頼らしい。お父さん。もう嫌な予感しかしない。
「先生,少年事件です。新件送致なので在監場所を確認してから接見に行ってください。」
普段,私選事件でもない限り,我々弁護士が初めて接見に行くのは,被疑者が勾留された後です。裁判所から帰ってくる時間を見計らってから行くので,大体午後5時以降になります。国選事件を多く担当している私にとって,初回接見とはそういうものという認識です。それなのに,新件送致とは!
Q2.新件送致ってなんですか?
A2.被疑者は逮捕されると48時間以内に検察庁に身柄を送られます。ニュースでは,「送検」という言葉でおなじみですね。検察庁では,検察官が被疑者の言い分を聞いて「弁解録取書」というものを作ります。この後,検察官は,被疑者を勾留すべきか,釈放すべきかの判断をすることになります。
「そうか,そうか。新件であれば検察庁に行けばいいんだね。勾留されるかどうかは話を聞いてみないとわからないけど,勾留されれば国選弁護人に選任するように要望書を出しておこう。」とまぁ,この時の私は思っていたわけです。
少年に会っていろいろなお話を聞きましたが,守秘義務があるので内容はお話しできません。勾留されるかどうかは微妙な案件でした。そこで,接見室まで案内してくれた検察事務官が衝撃の一言を言うのです。
「先生,本件は家裁に直送予定です。」
Q3.家裁に直送ってなんですか?
A3.通常の刑事事件の場合,勾留しないのであれば釈放するしかありません。しかし,少年事件の場合は,全ての事件を家庭裁判所に送致しなければならないことから(少年法41条,42条),勾留しない場合には直接家庭裁判所に送致されることになります。これが「直送」です。
複雑な話になってきました。「当番弁護士」の待機日に出動要請があり,事件は「少年事件」で「新件送致」であり,在監場所を確認したら「検察庁」で,「勾留」されると思っていたら「家裁に直送」されました。かなりイレギュラーな事態が私を襲おうとしていました。
家裁の出した結論は,観護措置に付するというものでした。
Q4.観護措置ってなんですか?
A4.観護措置とは,家裁が調査,審判を行うために,少年の心情の安定を図りながら,少年の身体を保護してその安全を図る措置です。観護措置には,家裁調査官の監護に付する措置と少年鑑別所に送致する措置の2種類がありますが,通常は後者の措置が執られます。3年B組金八先生第5シリーズで兼末健次郎に対して行われたのもこの措置です。
少年鑑別所というのは,各都道府県に一つしかありません。神奈川県では,港南中央にある横浜少年鑑別所だけです。遠い。それでも当番弁護士として接見した者として,継続して受任しようという強い決意を抱いたわけです。しかし,そんな強い決意は天変地異によって打ち砕かれてしまうのです。
そう,金沢八景以南の京急線が大雨で動かなくなってしまったのですね。
それでも何とかして鑑別所までたどり着こうとしましたが,やっぱり無理でした。
力尽いた私は歩いて家まで帰りました。
次に問題となったのは,少年事件の迅速性です。観護措置は,通常2週間なのですが,更新されると4週間まで延長になります。鑑別所では,心理テストやIQ測定を行う関係から,3週間程度の時間が必要と考えられており,更新されるのが原則となっています。観護措置が終わる前に少年審判を開く必要がありますので,少年事件では観護措置をとられた時期から審判日の予測が立つことになります。
そうするとどうなるか。審判は,観護措置が取られてから概ね3週間後。その間に被害者との対応や学校との連絡や少年との面会をすべて終えなければなりません。少年事件はとても忙しいのです。
しかも,あらかじめ少年事件の担当となっていれば,その後の予定を空けておくことができます。みなさん思い出してください。今回は当番弁護士からの受任です。
つまり,予定が全く空いていない。
ここまでお読みいただいた皆様にはもうお分かりだと思います。なぜ私がブログを更新できなかったのか。
しかし,事件も終了し,3連休でMGSⅤを全クリし,ようやく帰ってまいりました。
これからはブログを更新できるように頑張ります。
この事件の結末をお話しすることはできませんが,忙しくも充実した日々だったと思います。
願わくば,二度と事件を起こさないように生きていってほしいものです。
人の痛みを知れば警察の厄介になるような事件は犯さないはずだと信じています。
高校の先生から教えてもらった,ある高校生の歌は,いまでも私が生きる指針として胸の内に息づいています。
今日は,その和歌でお別れしましょう。
「人の持つ 痛み知るため 学問を 続けんと思う 受験生の夏」
投稿者:
アダジオ法律事務所
住所:神奈川県横須賀市富士見町2-72 森コーポ2階
電話番号:046-828-6960
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