真夏の事件簿①
2015.08.17更新
こんにちは。
横須賀のアダジオ法律事務所の弁護士の角井です。
みなさま,その後いかがお過ごしでしょうか。
8月も半分過ぎてしまったなぁ,としみじみ感じていましたが,8月のブログ記事数を見てそんなうららかな考えが吹き飛びました。
まだ1件しか更新してないじゃん。
ひどい。あまりにもひどい。
みなさまのおかげによりまして,長期夏季休業をいただいておりましたが,私はいったい何をしていたのか。
罪滅ぼしとして,この間に起きた事件について解説しましょう。
1.小網代湾女性殺人死体遺棄事件
7月29日,神奈川県三浦市三崎町小網代にある小網代湾で,ビニールシートのような ものに包まれた女性の遺体が浮かんでいるのが見つかった死体遺棄事件が発生しました。その後,8月6日,同事件について,アメリカ国籍の男性が,死体遺棄の容疑で逮捕されています。
この事件については,いまだ詳しい情報がわかっていませんが,現段階で着目すべきなのは次の2点です。
まず,発見された女性遺体が生きたまま海中に投げ入れられたとした場合,死体遺棄罪は成立しないのではないかという点です。この点については,本罪の客体である「死体」について,死亡した人の身体であると解されていることから,死体遺棄罪は成立しないと解すべきでしょう。
なお,犯人が死体であると思って海中に投げ入れていた場合は,刑法上の錯誤論が問題となりますが,この点については様々な議論があります。私から簡単にコメントすると,先程の事例では,死体遺棄の故意をもって殺人の結果を発生させているのですが,人を殺すという認識がない人に対して,殺人罪の責任を負わせることはできないでしょう。この場合,傷害致死罪にとどまるのではないでしょうか。
次に,死体遺棄罪が成立しない場合,逮捕の有効性はどうなるのかという点です。逮捕をするにあたっては,「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」が必要とされています。よくわからない基準ですが,この後に「起訴」や「判決」が待っていることからしても,それらの基準よりは緩やかなものでいいと考えられています。そうすると,被害者が亡くなっていたかどうかはよく調べてみないとわからないので,逮捕する段階では「相当な理由」があったと判断されるでしょう。
また,裁判になる際には,殺人罪で起訴できるのかという疑問があるかもしれませんが,それまでの捜査によって被害者が生存したまま海中に投げ入れられたことが判明した場合,殺人罪で起訴することは可能です。この場合,逮捕及び勾留の効果は,死体遺棄罪という被疑事実に限定されますので,改めて殺人罪で勾留がなされる可能性が高いと言えます。他には,死体遺棄罪については処分保留で釈放した上で,再度殺人罪で逮捕するということも考えられるでしょう。今後の報道に注目したいところです。
ふぅ。たまに真面目なことを書くと疲れますね。まだ一つしか書いてないじゃないかという突っ込みはへこみますのでご遠慮ください。
次回は,同業者が大変な目に遭ったあの事件を取り上げます。ご期待ください。
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