クールビズの制度趣旨とそれに忠実でいようとする者たち
2015.07.01更新
こんにちは。
横須賀のアダジオ法律事務所の弁護士の角井です。
気付けばもう7月ですね。今年も残り半年です。
私は日頃スリーピーススーツを着用しているのですが,梅雨明けと共にツーピース(期間限定)となります。
「ジャケットは脱がないのかよ!見てるこっちが熱いからネクタイ外せよ!」という声はよく耳にしますが,残念ながらご要望には応じかねます。
なぜなら,そのような姿は私の趣味嗜好に著しく反するからです。
この点について,貴重な資料が見つかりました。私の事務所の本棚にあった一冊の本に,まさしく私の言わんとすることが書いてあったのです。
元最高裁判事の藤田宙靖先生は,クールビスが開始された時の様子について,次のように語っています(藤田宙靖「最高裁回想録―学者判事の七年半―」2012年・有斐閣)。
『クールビズなるものは,要するに省エネに協力するために,夏の冷房温度を二八度に設定するから,それで暑ければ,軽装(例えば上着を脱ぎ,ネクタイを外す)でも良い,というだけのことであり,これにどう対応するかは,全く個人の問題であるはずであ(る)。』
『私の美的感覚から言えば,そもそも,単にネクタイを外しただけの姿などというのは,およそ様になっておらず,失礼ながら,国会の委員会における閣僚席の大臣の姿などは,見てはおられない。』
げに痛快です。しかし,ここで藤田先生は罠にはまってしまうのです。
『ところが,先のカメラの入った日,会議の途中から異様に暑くなり,遂に私も上着を脱ぎ,ネクタイを外し,ワイシャツの腕まくりをする羽目となった。その理由は不明であるが,当時,裁判官の間に,マスコミの手前「クールビズ」に協力しない最高裁判事がいることは具合が悪いから,敢えてそのような操作がされたのではないか,との風評が立ち,私もまたそれを信じたのであった。』
嗚呼,なんということ。高い志を持っていた藤田先生の心は,なにやらよくわからない大きな力によって,その意志をまげられてしまったようです。
私は,クールビズに反対しようというものではありませんし,大学時代は,地球温暖化を食い止める方法について,サークルの仲間と共に発表会を行ったこともあります。ただ,地球温暖化を抑止することと,クールビズを強制することは直ちに結びつくものではありません。暑さを我慢するか,暑さを感じない体を手に入れればいいだけのことです。
このような話に代表されるように,実際には社会の風潮に立ち向かうことにはかなりの勇気が必要ですし,またエネルギーも多く消費します。
「みんながやってるんだから従えばいいじゃん」というような素朴な民主主義に対応するためには,「法律上の義務はないはずですよ」といえる自由主義的な発想が必要となります。
「みんな残業代なんてもらってないんだから。」「電車内で痴漢に遭うことなんてよくあることなんだから。」「(過払金返還交渉で)他の先生方にもこの金額でご納得頂いてますから。」というような不正義を私は許したくありません。
『弁護士は,基本的人権を擁護し,社会正義を実現することを使命とする。』(弁護士法1条1項)
私は,社会正義を実現するためにこれからも戦いを続けていきます。
スリーピースを着てクールビズに真っ向から戦いを挑む弁護士角井駿輔に温かい声援をお願いします。
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