6月終わりは株主総会の季節
こんにちは。
横須賀のアダジオ法律事務所の弁護士の角井です。
ふと思ったのですが,もうすぐ6月も終わるんですね。
6月終わりといえば,株主総会が一斉に開かれる時期です。
ロースクールに通っていたころは,弁護士兼教授の先生が株主総会の準備であわただしくなり,授業の振り替えが行われることもしばしばありました。
そうすると,前期の授業もそろそろ終わりに近づき,期末試験のことを考えなければならなくなるわけです。いやぁ,これこそ風物詩ですね。
では,株式総会は,なぜ6月終わりに集中しているのでしょうか。
・株主総会とは
そもそも,株式会社とは,経営者(取締役)と出資者(株主)が明確に分かれている会社です。様々な事業をするためには資金が必要ですが,アイデアがあっても資金が足りないために事業を行えないという場合があります。逆に,お金は持っていても経営のノウハウはないという人もいます。そこで,経営を行う人とお金を出す人をうまくマッチングすることによって,継続的な収益を上げていこうというのが株式会社の基本的な考え方となります。
日々の経営は取締役に任せるとしても,会社にまつわる重要な決定には出資者が参加すべきです。そのため,会社法は,全ての会社に株主総会を開催するように義務付けており,会社の構成員である株主が直接参加し,会社の基本的意思決定を行う機会を確保しています。特に,①会社の基礎に根本的変動を生ずる事項(定款変更,合併,会社分割等),②機関等(取締役,監査役等)の選任・解任に関する事項,③計算に関する事項(計算書類の承認等),④株主の重要な利益に関する事項(剰余金の処分・損失の処理),⑤取締役等の専横の危険のある事項(取締役等の報酬等の決定)は,取締役会設置会社であっても,必ず株主総会で決議なければならないこととされています。
・株主総会の招集・開催場所
株主総会は,定期的に開催される定時株主総会と議題が生じたときに開催される臨時株主総会に分けられます。
通常総会は,この6月の終わりに集中している総会のことで,取締役の選任や計算書類の承認など,毎年必ず行われる出来事が扱われます。
これに対し,臨時総会は,特別な出来事が行った場合に文字通り臨時に開催されるものです。有名なところでいうと,先ごろ話題になった大塚家具での株主総会は,この臨時総会に当たります。
開催の場所について,会社法が制定される前は,本店の所在地またはそれに隣接する地でなければなりませんでした(改正前商法233条)。しかし,いまでは,この規定が撤廃されたので,株主の分布状況や出席人数を考慮して,開催場所を決めることができます。 理論上は,外国で開催することも可能なのですが,株主が出席しづらい場所があえて指定された場合には,その総会での決議が取り消されることがあります(会社法831条1項1号)。
・ではなぜ株主総会は6月終わりに開催されるのか
ここで最初の疑問に立ち返ってみましょう。6月終わりというと,何か区切りのいい時期というわけではありません。関東地方では,梅雨は全然明けないし,出会いや別れの季節というわけでもありません。
ここで,先程説明した定時株主総会の規定を確認してみましょう。
定時株主総会は,各事業年度の終了後一定の時期に招集されます(会社法296条1項)。わが国では,1年を一事業年度とする会社が多いことから,毎年1回定時株主総会を招集する会社が多いということになります。そして,この定時株主総会は,株主名簿の基準日にかかわる規制との関係により(会社法124条2項),その基準日から3か月以内に開催されることになります。
もう一つ確認すべきなのは,配当金に関する規定です。
配当金については,定款に基準日とその基準日株主に剰余金の配当を支払う旨を定めることが多いとされます。そして,わが国においては,事業年度の末日の株主に配当金が帰属すべきであるとの考えから,決算期である3月31日を基準日とすることが多いのです。
基準日=3月31日から3か月以内の開催=6月30日までの開催=6月終わりに定時株主総会が集中!!
お後がよろしいようで。
なお,定時株主総会が集中しているのは,総会屋対策としては有効であったと言われています。しかし,物言う株主が会社の経営を活性化させる現代においては,機関投資家が個々の議案を精査した上で議決権を行使できなくなるなどの弊害が主張されています。これは,決算期=基準日という慣行を改めればすぐに解消できる問題であり,学説においてもそのような主張が有力に行われています(例えば,田中亘『定時株主総会は何故六月開催なのか』「江頭憲治郎先生還暦記念・企業法の理論」上巻415頁(商事法務・2007年))。興味のある方は,是非ご覧になってみてください。
投稿者:
アダジオ法律事務所
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