戸松秀典先生「憲法」刊行に寄せて

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 こんにちは。

 横須賀のアダジオ法律事務所の弁護士の角井です。

 

 

 先週の土曜日は,久しぶりに学習院大学へ行ってきました。

 学習院大学は,大学院の3年間に在籍していた大学であり,修了後もOBとして何かと関わりを持っています。

 土曜日は,学習院大学法務研究所主催の法実務研究会が行われていましたので,若輩者ながらノコノコと出掛けて行ったわけです。

 

 

 この法実務研究会は,学習院大学法科大学院を修了して実務家になっている人たちを対象として,大学教授の先生方による講演会や,修了生自身が現在取り組んでいる事件に関する報告会などを行っています。これにより,法科大学院修了後も法曹としての資質を高めるための勉強の場が提供されているのです。

 

 今回のテーマは,「法実務と憲法~『憲法』執筆の動機と目的」であり,学習院大学名誉教授の戸松秀典先生が講演をしてくださいました。

 

 戸松先生の略歴はウィキペディアで確認してください。いろいろとすごい先生です。私は,法科大学院生のときに大変お世話になりました。ちなみに,戸松先生は芦部先生のお弟子さんなので,いま話題の長谷部先生とは兄弟弟子の関係になります。あぁ,戸松先生の方が兄です。

 

 戸松先生は,憲法訴訟の分野において我が国の第一人者と呼べる研究者であり,憲法訴訟に関する書籍はすでに出版されていました(例えば,「司法審査制」(勁草書房・1989年),「憲法訴訟(第2版)」(有斐閣・2008年)など)。また,京都大学の初宿正典先生と共編した「憲法判例(第7版)」(有斐閣・2014年)はかなりのベストセラーであり,法科大学院生でも多くの人が使っていることと思います。

 

 そんな戸松先生ですが,いまだ憲法の概論書と呼べる本は執筆していませんでした。そこで満を持して出版されたのが「憲法」(弘文堂・2015年)であり,今回の講演会は,その執筆の動機と目的を語る趣旨で行われたものです。

 

 

 戸松先生の本にはある特徴があります。それは,「学説」というものを正面から取り上げず,判例の分析に多くの紙数を割いているということです。これは,憲法学会がドイツ憲法の解釈学に基づいた演繹的な議論を展開し,現実を直視してこなかったという反省に基づくものであると思われます。

 つまり,憲法の解釈というものは,条文をじっと見つめていれば自ずとわかるというものではなく,法制化や個々の事件における裁判所の判断などによって帰納的に決まっていくものであるということです。そのため,著書の中には膨大な数の判例が登場し,その判旨から憲法上の権利の外枠的な限界を考察するという方法が採られています。

 

 もう一つの特徴は,努めて実務を意識した記述になっているということです。著名な違憲判決ばかりに目を向けるのではなく,下級審判例において憲法価値が問われたような事件にも着目し,実務において憲法秩序がどのように守られているのかを丁寧に論じています。

 日頃の事件において憲法の存在を意識することはほとんどありませんが,もしそのような問題に直面した時に役立つのは,このような概論書なのだと思います。

 

 講演の中では,京都大学名誉教授の佐藤幸治と京都の中華料理屋で意気投合した話や元東京大学教授の三ヶ月章先生から研究姿勢をたしなめられた話など,法学の世界に足を踏み入れたことのある人なら垂涎の逸話も多く披露され,終始楽しい雰囲気の講演会でした。

 

 なお,先生ご自身は,この本を「教科書」と認識されたり,「初心者にはおすすめできない」と言われたりすることがお嫌いなようですが,一般書としては相当難しい内容を含んでいます。個人的には,憲法学のことをある程度わかった上で読んだ方がいいと思います。

 

 ちなみに,いま話題の集団的自衛権について考えを深めようと考えている方には,この本は全くお勧めできません。その理由については,パラパラと立ち読みしてご確認ください。

 

 

 最後に,ミーハーな私は,先生からサインをもらってしまいました。 「憲法」を正面から写した図 筆ペンを持っていけばよかったと少し後悔

投稿者: アダジオ法律事務所

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弁護士 角井 駿輔

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